2014年度 高エネルギー物理学奨励賞受賞者を決定しました。
候補14論文を詳細かつ慎重に審査した結果、
Thiago Junqueira De Castro Bezerra氏 (東北大学)
宮崎 彬氏 (東京大学)
山口 洋平氏 (東京大学)
の3名を選考しました。 ( )内は学位取得時の所属。受賞されたお三方に、心よりお祝いを申し上げます。
受賞論文の講評
Thiago Junqueira De Castro Bezerra
Improvement of θ13 Measurement in the Double Chooz Experiment and the First Effective Δm312 Measurement from Reactor Neutrino Oscillation at Different Baselines
Double Choozにおける原子炉ニュートリノ実験において θ13の測定に貢献し、さらにDaya Bay, Double Chooz, RENO三つの原子炉ニュートリノ実験のベースライン長依存性に注目したglobal fitからΔm312を測定した。第2章は過去20年あまりの様々なニュートリノ観測実験の詳細に触れ、各々の到達点とopen questionについて述べ、良くまとまったreviewとなっているほか、実験の背景や実験装置などについてもよく噛み砕いて書かれている。
宮崎 彬 (みやざき あきら)
Direct Measurement of the Hyperfine Structure Interval of Positronium Using High Power Millimeter Wave Technology
本研究では大強度ミリ波光源や高い増幅率を持つ共振器の開発によって、ポジトロニムの基底状態の超微細構造の直接測定を世界で初めて達成した。QEDでの超微細構造の理論的説明や装置と解析手法は良く記述されている。装置の性能により実験精度は2桁足りないが、今後よりパワーが大きく周波数を調整できるジャイロトロンの開発や、真空中でのポジトロニウム生成による将来の展望が示されている。ただし、従来のZeeman効果を用いた間接測定との競争に関する展望がなかったのは残念だった。
山口 洋平 (やまぐち ようへい)
Observation of Higgs Boson with Di-photon Events in Proton-Proton Collisions
LHCのATLAS実験におけるヒッグス粒子探索において2光子崩壊モードを解析し、光子-ジェットを分離する手法の開発、エネルギースケールの較正、光子同定における系統誤差の改善などに貢献し、2光子崩壊モード単独でのヒッグス粒子の「発見」や性質の測定に寄与した。論文で主題とする物理の背景や目的、この解析に関係する検出器に重点を置いた記述、光子の再構成、事象の選択とカテゴリ-化などに関する解析の手法、さらには標準模型に対する信号の強度についても良くまとめられている。この測定を踏まえたBSM等に対する将来的展望に関する記述が若干不足しているのは残念だった。
2014年10月16日
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