第 20 回(2018 年度) 高エネルギー物理学奨励賞受賞者を決定しました。


Ralitsa Sharankova氏 (東京工業大学)
本多 俊介氏 (筑波大学)
陳 詩遠氏 (東京大学)

の3名を選考しました。
( )内は論文発表時の所属。
受賞されたお三方に、心よりお祝いを申し上げます。            

受賞論文の講評

Ralitsa Sharankova (東京工業大学)
Measurement of θ13 in reactor neutrino oscillation with the Double Chooz near and far detectors

 Reactorからのニュートリノを用いた混合角θ13の測定に取り組んだ論文。物理が極めて詳細に記述されており、きちんと理解したうえで実験に取り組んでいる様子が見て取れる。検出器、解析の説明も非常に丁寧に行われており、わかりやすく、かつ詳細な情報が記載されており、極めてよくできた学位論文となっている。統計量の不足により、測定結果自体のインパクトは残念ながら限定的であったが、審査委員会は本博士論文の質を高く評価する。


本多 俊介 (筑波大学)
Search for the Higgs Boson Produced in Association with Top Quarks and Decaying into Bottom Quarks with the ATLAS Detector

 LHCのATLAS検出器を用いて、Top quark のYukawa結合の測定に取り組んだ論文。本テーマは物理として非常に魅力的であるが、それを読者にわかりやすくきちんと説明している点を評価した。また、多変数解析を利用して精度を高めようと工夫しているが、かなり大量の解析を細部にわたり行なっており、その解析手法の高さと粘り強さを評価する。特に、多くのvariablesを用いて、それぞれを理解しながらmultivariate analysis を敢行し、最後にLikelihoodで決めたことは解析の力が相当なくては出来ないことである。結果は、標準理論との比較において誤差が大きく限定的なものとなったが、HttというチャンネルでH→bbの崩壊が見えた意義は小さくない。


陳 詩遠 (東京大学)
Search for Gluinos using Final States with One Isolated Lepton in the LHC-ATLAS Experiment

 LHC-ATLAS検出器のラン2のデータを用いた、グルイーノ生成事象の探索。軽い荷電レプトンを1つだけ持つ終状態に焦点を合わせ、SUSY breaking シナリオに依拠しない(質量階層性を限定しない)発見に重きを置いた解析手法を開発している。ダークマターの残存量からの帰結を有効に用いていて、意欲的な研究である。MSSM の複雑な理論的側面も良く調べられており、物理的動機付けが明解に書かれている点を評価した。物理的背景を理論の動向をも含めたうえできちんと理解し、実験、解析に取り組んでいる点をおおいに評価する。また、解析において、モンテカルロシミュレーションと実験データの丁寧な比較を行い、結論を導き出している点も評価する。


2019年物理学会賞
選考委員長
駒宮幸男

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