日本の高エネルギー物理学研究者が実験を行っている加速器研究所

BNL ブルックヘブン国立研究所(アメリカ・ニューヨーク州)
ニューヨーク・ロングアイランドの東部にあるこの研究所は、1960年稼働開始の陽子シンクロトロン(AGS:J/psiなどを発見。珍しく反時計回り)を入射器とした相対論的重イオン・コライダー(RHIC:2000年稼働開始)による素粒子・核物理の研究を行っており、日本はPHENIX実験の一大グループです。なおRHICでは世界で唯一の偏極陽子同士の衝突実験も行っています。広い所内は緑につつまれ、野生の鹿や七面鳥もたくさんいますが、ほんの(?)90分ほどのドライブで摩天楼の街マンハッタンです。
CERN ヨーロッパ核物理研究機構(スイス・ジュネーブ)
WWWの発明でも有名なこの研究所は、ジュネーブの中心街からトラムで約25分、フランスとの国境近くにあります。周長27 km、地下100 m、フランスとの国境をまたぐ世界最大の加速器(LHC)で素粒子物理の研究が行われています。また、他の加速器を用いて核物理や素粒子物理の研究も行われています。巨大な加速器は国境をまたいでいるので、実験室を移動するときにパスポートは忘れられません。日本からは国際協力でLHCのATLAS実験等に参加しています。
DESY ドイツ電子シンクロトロン研究所(ドイツ・ハンブルク)
ドイツ北部ハンブルクおよびベルリン郊外の2つのサイトを持っています。2007年まで世界唯一の電子・陽子衝突型加速器HERAが稼働し、陽子の内部構造測定等の研究が行われていました。現在、国際リニアコライダー ILCおよび自由電子レーザー European XFELに向けた加速器開発、主に自由電子レーザーを用いた放射光源を用いた研究、および素粒子物理(LHC, ILCなど)の研究を行っています。前者2つはハンブルクのサイトで行われ、European XFELが2016年以降の運転開始を目指しています。高エネルギー物理の研究所では数少ない、住宅地に囲まれた市の中心部に近い研究所です。
FNAL フェルミ国立加速器研究所(アメリカ・イリノイ州)
シカゴの郊外に、シカゴ・オヘア空港と同じくらい大きな敷地面積をもつこの研究所では、陽子・反陽子衝突型加速器テバトロンが2011年まで稼働していました。日本からも参加するこのテバトロンを使った実験グループによって、最後のクォーク、トップクォークが発見されました。現在は、ニュートリノ実験や天体物理学などの研究が行われ、さらに、次期計画として陽子加速器の強度増強が計画されています。広大な敷地を誇る所内にはバッファロー牧場やトウモロコシ畑があります。
IHEP 中国科学院高能物理研究所(中国・北京)
高エネルギーは中国語で高能。北京にあるこの研究所では、電子陽電子衝突型加速器(BEPC)により素粒子物理の研究や放射光施設(BSRF)による物質科学の研究が行われています。また、高能研では自由電子レーザーや加速器の研究もさかんです。日本からは、BES実験に参加しています。
KEK 高エネルギー加速器研究機構(茨城県・つくば市/東海村)
KEKは日本を代表する高エネルギー物理の研究所です。つくば市、筑波山のふもとにあるつくばキャンパスでは、 2010年まで世界最高ルミノシティの記録を持つ周長 3km の KEKB 加速器が運転していました。現在、Belle II 実験に向けて SuperKEKB へのアップグレードが進行中です。この他、物質科学研究のための放射光施設(KEK-PF)などがあります。また、茨城県東海村にある東海キャンパスには原子力研究開発機構(JAEA)と共同運営する大強度陽子加速器 J-PARCがあり、T2K実験をはじめとする素粒子原子核実験や物質生命科学の研究が精力的に行われています。
PSI ポール・シェラー研究所(スイス・チューリッヒ近郊)
ライン川の支流アーレ川沿い、緑に囲まれたこの研究所では、加速器中性子源やミュオン、放射光(SLS)による物質の研究や核物理の研究が行われています。ここの食堂のシェフは数々の賞を受賞したすご腕で、ランチタイムはPSIを訪れる研究者の楽しみのひとつになっています。日本からはMEG実験等に参加しています。
RAL ラザフォード・アップルトン研究所(イギリス・オックスフォード郊外)
大学の町オックスフォードに近く、羊の牧場に囲まれたこの研究所のISIS〈アイシス〉では、加速器で作られる中性子やミュオンを用いて物理学、化学、物質科学などの研究が行われています。所内の芝生は冬でも青々としていて、リスやウサギが走りまわっています。日本研究者が、この研究所と共同で中性子散乱装置を開発し研究に利用しています。
SLAC スタンフォード線形加速器センター(アメリカ・カリフォルニア州)
花の町サンフランシスコから車で1時間、スタンフォード大学内に設置されたこの研究所では、長さ3 kmの線形加速器を使って素粒子物理の研究が行われていました。なかでもB中間子の研究を行うBaBar実験は、KEKのBelle実験の強力なライバルでした。現在は、X線レーザー(LCLS)や放射光施設(SSRL)を用いた物質科学が研究の中心になっています。また、加速器分野でのKEKとの共同研究なども行われています。SLACを訪れる研究者は、必ず帰りにサンフランシスコのチャイナタウンに寄り、おいしい中華料理に舌鼓を打つと言われています。
SPRING-8 スプリング-8 大型放射光施設(兵庫県・佐用郡)
Spring-8 は、8 GeV の電子リングからなる放射光施設です。主に物質科学研究が行われていますが、レーザー電子光を用いてハドロンの性質を研究するLEPS実験など、素粒子、原子核関係の研究も行われています。

Page Top