日本の高エネルギー物理学研究者が参加しているプロジェクト
ALICE |
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CERNにある世界最高エネルギーの大型ハドロン衝突装置LHCを使って原子核同士を衝突させ、陽子などの内部にある素粒子(クォーク、グルーオン)が主役として振舞う、宇宙誕生直後に存在した超高温物質相を研究する実験です。
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ATLAS |
CERNに建設された、世界最高エネルギーの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を使った陽子・陽子衝突実験です。2010年から本格稼働し、2012年までの Run1 において取得した重心系エネルギー 7-8 TeV の衝突データを用いてヒッグス粒子を発見しました。
これに続くRun2(2015-2018)では重心系エネルギー 13 TeV で実験を行い、第3世代フェルミオンとヒッグス粒子の結合定数の測定、第2世代フェルミオンとヒッグス粒子の結合の兆候を観測、Run1と比べて大幅に感度を改善した新粒子探索による新物理の検証などの成果をあげました。
現在は、Run3(2022-2025)が進行中であり、さらなるデータ量の増加と解析手法の高度化により、ヒッグス場の詳細研究や新物理探索などを精力的におこなっています。また、2029年から始まる高輝度 LHC実験に向けた検出器・加速器磁石の準備を急ピッチで進めています。
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Belle/Belle II |
Belle実験では、2010年まで運転した世界最高ルミノシティの電子陽電子衝突型加速器KEKBが生成した、大統計のB中間子やタウ粒子などの崩壊事象を研究しています。B中間子の研究では大きなCP対称性の破れを発見し、小林益川理論を証明しました。
2019年からはKEKBの30倍の最大ルミノシティを設計値とするSuperKEKBを用いたBelle II実験が本格的に始まり、すでにBelle実験のデータ量の半分に迫る素粒子反応を記録しています。Belle II実験は、新しいCP対称性の破れの測定やダークセクターに属する新粒子の探索、また標準理論パラメータの超精密測定などの取り組みを通じて、直接探索が困難なエネルギー領域も含めて、標準理論を超える新しい物理を高感度に探索しており、すでに多くの研究結果が報告されています。併せて、より高輝度の運転を目指した将来のハードウェア改良の研究も進めています。
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CDF |
トップクォーク、ヒッグス粒子や超対称性粒子の探索を主目的として、Fermilabで1985年から2011年まで稼働した重心系衝突エネルギー(2 TeV)のTevatron加速器を使った陽子・反陽子衝突実験です。1994年にトップクォークを発見しました。他にBc中間子発見(1998年)、Bs中間子振動の初観測(2006年)等の成果があります。
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CMB |
宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background、略してCMB)の偏光を測定することにより、熱いビッグバン以前の宇宙で生成されたとされる原始重力波を検出し、背後にあるインフレーション理論や量子重力理論を探ります。
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COMET |
茨城県東海村の大強度陽子加速器施設J-PARCにおいて、荷電レプトンフレーバー非保存過程であるミューオン電子転換過程を探索する実験です。現在の上限値を10000倍以上に上回る10^{-16}の実験感度を目指しています。
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DeeMe |
茨城県東海村の大強度陽子加速器施設J-PARCで、RCSからの大強度高純度パルス陽子ビームを使って陽子標的中に大量のミューオン原子を生成し、このミューオン原子で起こる稀な現象を通して素粒子の標準理論を超えた新しい現象を探索する実験です。
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Double Chooz |
Chooz原子力発電所において原子炉ニュートリノを観測し、ニュートリノ振動の研究をする実験です。2011年に実験を開始しました。
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FASER |
FASER実験は、ATLAS実験の陽子・陽子衝突で生成されたGeVからMeV程度の軽い長寿命な新粒子を探索するための実験です。2021年春にATLAS実験のビーム衝突点から480m下流に検出器を建設しました。そして、2022年から開始されるLHC Run3での物理データの取得を目指しています。さらに、FASER検出器の手前にエマルション検出器を設置し、LHCの陽子・陽子衝突で生成される高エネルギーニュートリノの測定も行います(FASERν)。
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Fermi-LAT |
フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡。日本が開発したシリコンストリップ1万枚を主要検出器とする宇宙GeVガンマ線検出器で、人工衛星に搭載されて、2008 年から観測を開始しています。従来のガンマ線観測衛星の数十倍の良い感度を持ち、3000を超える多数の天体の発見、暗黒物質からのガンマ線の探査を行なっています。この他、宇宙高エネルギー粒子の加速の解明や加速器の探査、ブラックホールからの相対論的ジェットの観測、宇宙一の大爆発であるガンマ線バーストの観測、宇宙初期磁場の制限などでも成果を出しています。
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g-2/EDM |
茨城県東海村の大強度陽子加速器施設J-PARCで極冷ミューオンビームを作り、超精密磁場中でミューオン異常磁気能率および電気双極子能率を精密測定することにより、標準模型を超える物理現象を探索する実験です。
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ILC |
約1TeVまでの直線型衝突加速器をつくり、ヒッグス粒子やトップクォークの詳細な研究や超対称性粒子などの発見をめざす実験計画です。その規模の大きさから、世界48カ国の参加する国際協力で、加速器と測定器の研究開発と、物理実験の検討が推進されています。現在の最有力建設候補地は、日本(北上山地)となっています。
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JSNS2実験 |
J-PARC MLF水銀標的内で大量に発生するμ+の静止崩壊で生成する反ミューニュートリノを使用したステライルニュートリノ探索実験です。μ粒子の寿命よりも十分短いパルス状の陽子ビームとGdを使った液体シンチレータを50トン使い、反電子ニュートリノへの振動現象を探索し、世界最高の感度を目指します。
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KamLAND/KamLAND-Zen |
1000トンの液体シンチレータで反ニュートリノを観測し、ニュートリノ振動や地球内部・天体現象を研究します。また、極低放射能環境を活用して、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索を皮切りに多様な宇宙・素粒子研究に挑みます。
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KOTO |
茨城県東海村の大強度陽子加速器施設J-PARCの遅い取り出しビームで大量の中性K中間子をつくり、物質と反物質の対称性を破る稀な崩壊現象を測定して、素粒子の標準模型の検証ととともにその崩壊でしか検出できない未知の物理法則の発見を目指す実験です。
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MEG/MEG II |
PSIの世界最高強度ミュー粒子ビームとこれまでにない高性能測定器を用いてミュー粒子の稀崩壊現象を世界最高感度で探索、超対称大統一理論やニュートリノ質量の謎に迫る実験です。現在、究極感度のアップグレード実験MEG IIを準備中です。
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NINJA |
J-PARCにて原子核乾板を主検出器とした測定器を用いて、ニュートリノ-原子核反応断面積の精密測定を行う実験です。これによりニュートリノにおけるCP対称性の発見・ステライルニュートリノ検証を可能とする高精度なニュートリノ振動測定を実現します。高い空間分解能を活かして、他のニュートリノ測定器では検出が難しい低エネルギー陽子の測定・電子ニュートリノ反応の測定ができるという特長があります。2019年末から水標的ニュートリノ反応の測定をする物理ランを開始しました。
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OPERA |
CERNからイタリアのグランサッソまでミューニュートリノを約730km飛行させ、原子核乾板を用いた大型検出装置によって、タウニュートリノへのニュートリノ振動を出現モードで検出、検証する国際共同実験です。
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PHENIX(HI, spin) |
BNLにある高エネルギー重イオン衝突装置RHICを用いた実験です。HI実験は超高密度の原子核状態を、spin実験はクォークやグルーオンのスピン状態を研究しています。
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SPAN |
原子を用いたニュートリノ質量分光計画(SPectroscopy with Atomic Neutrino)は質量絶対値やCP位相などニュートリノの未確定パラメーターを包括的に決定することを目指しています。この目的の実現には非常に稀な現象を加速する「マクロコヒーラント増幅」が重要です。最近二光子過程を用いてこの増幅過程の根幹部を実証することに成功しました。今後は光子を伴うニュートリノ対放出過程の検出を目指します。
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Super-Kamiokande |
神岡鉱山の地下に設置された総質量50,000トンの水チェレンコフ検出器を使って,陽子崩壊の探索や宇宙から飛来するニュートリノの観測を行っています。T2K実験の主検出器としての役割も担っています。
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中性子基礎物理 |
先進光学デバイスにより中性子を制御し、β崩壊や電気双極子モーメント、短距離相互作用などの精密測定によって素粒子標準理論を超える物理を探る実験です。
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